モデルロケットの誕生
モデルロケットが歴史の舞台に登場したのは1957年。1958年には米国でキットとエンジンが量産され市販されました。それにはひとつのわけがありました。
モデルロケット以前の青少年のロケット実験は、危険な燃料や機体を使っていたために、事故や怪我が相次ぎました。これを憂慮した宇宙ロケットの専門家が、何とか安全なロケット実験が出来ないものかと頭を悩ませていました。そこに届けられたのが、アメリカの片田舎にすむ靴屋さんが工夫した「オモチャロケット」。この1機のロケットを原型にして、安全な青少年ロケットのアメリカでの基準が作られました。やがて1969年の国際宇宙学術会議から青少年の安全なロケット実験の基準が研究され、1973年に国際模型ロケットエンジン規格が制定されることになりました。
欧米ではモデルロケットが1970年代から1980年代にかけて一大ブームを巻き起こし、その後小さなものは学校などの教材として、大きなパワーを持つものは大人の趣味として社会に定着していきました。
日本モデルロケット協会設立
日本で宇宙ロケットの研究が始まった1950年代の半ば、情熱的な青少年の間にロケット熱が高まりました。東京都国分寺市での東京大学のペンシルロケット水平飛翔実験や、1955年に秋田県道川に建設された日本で初めてのロケット打上げ施設での実験などが新聞などを賑わすたびに、宇宙開発やロケットに感心を寄せ、自分でも飛ばしてみたいと考える人が増えてきました。スプートニクやエクスプローラが次々と打ち上げられ1960年頃その高まりはピークを迎えましたが、全国の高校、大学あるいはマニアたちが行った実験で事故が相次ぎロケットを危険視する社会風潮と法制度により日本でのモデルロケットの流通はまだ叶いませんでした。
優れた宇宙教育教材であるモデルロケットを欧米の青少年達と同じように日本の青少年達にも経験させてあげたいという一念で山田誠氏(初代会長)は火薬専門家の斉藤一雄氏(当時:中外火工株式会社社長、埼玉県火薬類保安協会副会長)と共に通商産業省(現経済産業省)の火薬専門職と何度も相談・調整を行ない、国内におけるモデルロケットの受け皿となるべく1990年8月に任意団体として日本モデルロケット協会が設立されました。そして2004年には特定非営利活動法人(NPO)として認証されました。
省令の改正と通達
当初B型以上のモデルロケットエンジンを購入・消費するためには火薬類譲受・消費許可申請が必要だったのですが、協会の度重なる働きかけにより1995年10月6日、ついに火薬類取締法施行規則の一部改正が通商産業省により行なわれ、A~C型エンジン(火薬量20g以下)と火薬量0.1g以下のイグナイタはがん具煙火 に(第1条の5)、D型以上(火薬量20g超)のエンジンは火薬に、がん具煙火に該当しないイグナイタは火工品となりました。
つまり火薬量20gを超える火薬類扱いのエンジンは、ロケットの打上げ場所を管轄する都道府県知事もしくは市役所や消防への火薬類譲受・消費許可申請により許可を受ければ購入し打ち上げられるようになったのです。しかも、従来は18歳以上でなければ許可の対象とならなかった火薬類扱いのエンジンが、第84条の危険の少ない取り扱いの指定を受け18歳未満でも扱えるようになったのです。
このため火薬類扱いのエンジンを安全に取り扱うために、国際航空連盟(FAI)のスポーツコードセクション4B(スペースモデル)を参考として日本の法規に適合するようにした技術基準が、改正施行規則第56条の3の2「模型ロケットに用いられる火薬類の消費の技術の基準」として公布されました。
そして、同年11月に通商産業省環境立地局長より、日本モデルロケット協会に対しがん具煙火とされるC型以下のエンジンとイグナイタの消費についても、規則第56条の3の2に規定する模型ロケットに使用される火薬類の消費の技術上の基準に準拠して行われることが災害防止上望ましいことから、取り扱い従事者に指導してくださいとの通達7立局第499号が出されたのです。
つまり法令上、年齢制限なくモデルロケット用エンジンを使用できるようになった代わりに日本モデルロケット協会の指導を受けてくださいねということです。このような経緯からモデルロケットを安全に使用するために現在のライセンス制度を整備しました。
役員名簿
協会が発行する従事者資格
前項のような経緯で通達7立局第499号に則って、公式に認められた打上従事者制度を制定しています。打上従事者証は、政府が発行する免許ではなく日本モデルロケット協会が発行する資格です。
参考までに政府が発行する免許ではありませんが、これがなければ運用できない類似の例としては、ハンググライダー/パラグライダー(日本ハング・パラグライディング連盟発行の技能証)、超軽量動力飛行機(ウルトラライトプレーン)(免許ではなく国土交通省からの許可)やスクーバダイビング(各国の指導団体発行のCカード)など、国家資格ではなく民間団体などが発行する資格が各種あります。